大学生麻雀雑記

麻雀好きな大学生が色々と書いていきます

麻雀における差し込みについて

 

近頃

 天鳳の調子があまりにも悪く、5段から滑り落ちそうだ。急激に成績が落ちたので流石に運のせいにしてしまいたいところではある。だが、数十半荘単位の不調など誰にでもある。スマホを投げ捨てるのをこらえて、負け牌譜から原因を探っていこうと思う。 

 また、麻雀AIの記事がそこそこブックマークされている。AIの思考回路などに興味があるので、これを口火にさらに詳しい記事が掲載されれば幸いである。

mjplayer.hatenablog.com

差し込み

RMUライセンストーナメントにて

 先日6月22日、「ライセンストーナメント」が行われた。RMUの新しいタイトル戦である。その準決勝にて、とある神技が披露された。

 

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 南二局の一本場、西家の梁瀬選手がなんと7巡目国士無双を1筒待ちで聴牌する。それに対し、東家の多井選手は以下の手。

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(理牌の様子は画像の通り)

 ドラは7筒であり、7巡目にしてはそれほど良い手ではない。しかし順当に手を進めようとすれば、今でなくともいつか1筒が打ち出されることは必至である。西家の河が明らかに国士であるが、まさか7巡目で張っているとは普通思えない。

 ここで多井選手は小考し、3筒を抜き打った。結果は、喰い仕掛けをしていた北家の江澤選手に南ドラ1の2300点(一本場)の放銃となった。国士無双の成就を防いだのである。

 これを見た自分は、さすがに痺れた。「これがプロだ!」とまで思った。

差し込みの必要性

 さて、この動画でポイントとなるのはもちろん「差し込み」である。この場面で差し込みが必要そうなのは、(外野にとっては)分かりやすい。役満をアガられた時点で、大きく離れたトップ目ができてしまうからである。大きく馬身を離されるくらいなら、数千点を犠牲にしてこの局を流す。これが今回の差し込みのコンセプトだ。

 普段はどのような場面で差し込みが必要となるのであろうか。大物手の成就を防ぐという場合ももちろんあるが、一番多いのは順位の確定であろう。すなわち、満貫ツモでまくられる条件や、対立する相手が親の時などは、他家に振り込んででも局を流した方が得になるというわけだ。(特にオーラス)

 麻雀というゲームは、素点の影響ももちろん大きいが、順位ウマの存在の影響がなお大きい。一般的なワンスリー(10-30)では、順位が一つ下がることは最終的に20000点を失うことに等しい。したがって、振り込んでも順位が変わらないという条件の中では、差し込みという戦術が有効なのである。特に天鳳ではポイント移動が完全順位制のため、この傾向が特に顕著だ。

成功例

 具体的な成功例を見ていこう。以下に示す画像は「強い方の藤井さん」よりお借りした、オーラスでの差し込みの様子である。

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 2着目とは22000程度の差があり、ほぼ盤石のトップではあるが、親の満貫一撃で変わるし、連荘されてまくられるようなことも珍しいことではない。つまり、親以外に満貫以下で振り込めばトップを維持してゲームを終えられる。対面なら倍満でも良い。

 まず断ラスの対面、おそらく萬子の染め手であろう。南を槓するも萬子や字牌にはドラが乗らない。倍ツモや上家下家からの跳直は厳しそうだ。仮に倍満手を奇跡的に張れたとしても、順位が変わらないかつゲームが終了してしまうので自分(強い方の藤井さん)からはアガれない。

 ならば差し込めるのは、2000点で2着浮上の下家である。喰いタン模様の下家に親の現物でもある3萬を打ち込む。果たして思惑通り安手であり、トップを維持して終了することができた。

 次は、自分のうまくいった差し込みである。

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 2着目の親とは16000点ほどの差のあるオーラス、割と安全圏内だが逆転される可能性は大いにある。喰いタン模様の親に気を配りながら打牌していると対面からありがたいリーチが。3着目の対面はリー棒を入れるとラスと7000点程度の差、2着と8500点の差であり、出アガり跳満もしくは満貫ツモで2着逆転である。自分は跳満を放銃しても変わらず一着でゲーム終了できるため、ここは差し込みに行く。

 親への安牌かつそれっぽい牌を切っていくと、1筒でロンの声。リーチ七対子で3200点であった。2着浮上はツモ条件であったが、ラス回避で倒したのだろう。

フリーでは?

 フリー麻雀においても、ルールによるが差し込みは有効だ。だが、あまり気乗りしない。理由は、フリーでは素点も重要なのと、祝儀ルールが存在するからだ。素点がポイントに直結するため、あまり点棒は減らしたくない。祝儀は2000点相当や5000点相当のルールが多いため、喰いタン赤赤の3900点に振り込んでも実質高打点に振り込んだのと同じくらいのポイントを取られてしまう。

 順位ウマを手放すよりかは差し込みをした方がいいが、苦肉の策である。完全順位制の店ではガンガン差し込めばよい。

麻雀におけるスーパープレイ

 役満をズバリとアガること、これは確かに見栄えもよく、正に麻雀の花形と言ってもよい。それに対し、多井選手の上記のような差し込みはどうであろうか。動いた点数は高々2300点、しかも放銃である。

 しかし、この地味な打牌にこそ麻雀の醍醐味があるのであり、「役満級」のプレーと言っても過言ではないと思う。麻雀とは運のゲームであるが、極力運の要素を排除し期待値の最も高い手、その場での最善手を取り続けたプレーヤーが長い目で見れば勝つようになっている。今回の多井選手のように、常人には思いもつかない理詰めでの選択で正答に至ることが、麻雀におけるスーパープレイなのである。