雀荘と法律【雀荘での麻雀は違法か?】
雀荘
昭和の全盛期から数は減ったと言えども、世間には至る所に雀荘がある。そして、ほとんどの雀荘では店によって異なる「レート」をのせて遊ぶ。しかし、ここで単純な疑問がわいてくる、「雀荘は法律的に大丈夫なのか?」
風営法
そもそも、雀荘は法律的にどう定義されているのだろうか。「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(いわゆる風営法)の中に、「この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。」という文言があり、
第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。一 キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業三 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの四 まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業
と記載されている。
「まあじやん屋」すなわち雀荘は風俗営業店のひとつとして指定されているのだ。風営法の中で雀荘が定義されるということは、雀荘は風営法に従わないといけないということである。雀荘が守るべきこととは何か?
まず規制されるのは「営業時間」である。同じく風営法の中に、
第十三条 風俗営業者は、深夜(午前零時から午前六時までの時間をいう。以下同じ。)においては、その営業を営んではならない。ただし、都道府県の条例に特別の定めがある場合は、次の各号に掲げる日の区分に応じそれぞれ当該各号に定める地域内に限り、午前零時以後において当該条例で定める時までその営業を営むことができる。一 都道府県が習俗的行事その他の特別な事情のある日として当該条例で定める日 当該事情のある地域として当該条例で定める地域
とある。すなわち、雀荘の深夜の営業は法律で禁止されているのだ。
また、ゲーム代金にも法規制がなされている。「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則」(国家公安委員会規則)においては、
第三十六条 法第十九条の国家公安委員会規則で定める遊技料金に関する基準は、次の各号に掲げる営業の種類に応じ、それぞれ当該各号に定めるとおりとする。
とある。東風戦の雀荘などはこの規定を超えがちであり、摘発などを受けやすいとされる。
このほかにも、「解放されていない個室」での営業や「遊技の結果に応じて賞品を提供」することも禁じられている。
また、ノーレートの雀荘いわゆる「健康雀荘」も定義上は風俗営業店であるため、上記の規制を免れず深夜営業や多額のゲーム代を取れば摘発の対象となる。
(参考:
https://fuei.jp/fuei_kyoka_introduction/topic/jyanso
賭博罪
上に述べたものは雀荘に対する規制である。では、個人に対する規制はどのようなものか?思いつくのは「賭博罪」であろう。刑法によると、
とある。「賭博をした者」とのみあるため、定義上は「1円でも賭けたら違法」なのである。
また、「一時の娯楽に供する物」についてだが、実は公的な統一解釈が存在しないため、過去の判例から解釈するよりほかない。簡単には、「飲食物」や「即時に購入する飲食物の代金」がこれに該当するようだ。つまり、「ご飯代を賭けての遊戯」は法的に認められている。(故に『〇気じゃんけん』は違法賭博ではない)
(参考:
https://www.mc-law.jp/kigyohomu/21180/
雀荘の法的立場
さて、色々と雀荘と法律について書いてきたが、調べれば調べるほど雀荘は法的にアウトである。深夜も営業している雀荘がほとんどだし、健康雀荘以外ではほぼレートが乗っている。「麻雀」の看板が出ている店は片端から摘発されて絶滅しそうなものだが、現実にはそんなことはない。なぜか?
簡単に言ってしまえば、「お目こぼし」である。違法行為が行われていることは警察も司法も百も承知だが、見逃しているのだ。刑事訴訟法によれば、
第二百四十八条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
とある。つまり、犯罪行為が明るみにでても必ず起訴されるとは限らないということである。
賭博行為が罪にされる理由として、過去の判例の中で「勤労等の正当な原因によらず、単なる偶然の事情によって財産を獲ようと射幸心が煽られてしまうと、怠惰で浪費な風潮が蔓延し、健康で文化的な勤労の美風を害するばかりでなく、暴行、脅迫、殺傷、窃盗、強盗等を誘発したり、国民経済の機能に重大な障害を与えたりする恐れすらあるため」ということが述べられた。長いが、要するに「賭博は社会悪の元凶」と危惧されているのだ。
逆に言えば、そのような荒廃した状態に至らない範囲であれば、賭博行為は容認(黙認)されるのではないか、ということである。一般的なレートで動く金銭は数万程度であり、一般人を異常な状態へ導くレベルのものではない。故に、「点20からがアウト」などと一般に言われている。
しかし、過去には一般的なレートのチェーン店が摘発された事例があり、「低レートなら合法」というわけでは決してない。単に他の雀荘が見逃されているだけである。
(
https://www.2nn.jp/newsplus/1336612124/
)
雀荘への踏み込み
雀荘で麻雀を打っていたら警察がドカドカと踏み込んでくる......。一度は不安に思ったことがあるだろう。このような事例は、上に書いたことからしてほぼあり得ない。あるとすれば、雀荘の「風営法違反」に対する摘発であり、個人が賭博罪で捕まった事例というのは相当少ない。
個人が逮捕された事例としては、漫画家の蛭子能収さんの例が挙げられる。
点20の雀荘と摘発されるには十分なレートの店だが、放置されている雀荘はいくらでもある。なぜ警察が来たのだろうか?
蛭子能収さんの告白によれば、自身の麻雀体験(違法行為)を書いた漫画内の表現について警察から注意を受けたが、ほぼ修正しなかったため警察から怒りを買ったとある。つまり、雀荘それ自体を摘発しに来たのではなく、蛭子さん個人を逮捕するのが目的だったとも考えられる。
結論
雀荘は風俗営業店であり、深夜営業の禁止など様々な規則を受ける。また個人もオンレートで麻雀を打った場合、賭博罪などの刑罰が適用される可能性がある。
しかし、実際に摘発され罪に問われる可能性は低く、警察の踏み込みを受けることなどは非常に稀なことである。
摘発の可能性が低いとは言え違法行為は違法行為であり、逮捕や起訴のリスクがあることを考慮する必要がある。
(法律等は2019年11月現在のもの)
(参考:
https://news.yahoo.co.jp/byline/fukunagakatsuya/20161227-00065918/
)