初めての雀荘
先輩たちとの麻雀
以前全自動雀卓に触れて感動した僕は、先輩の家に入り浸るようになった。やはり自動卓が置いてあると人が集まるもので、「打ちたい」と希望するとほとんどの場合人がそろった。
そこで打ち続けておよそ二か月が立った。ようやく牌を切るスピードにも慣れ、初めのように一方的にボコボコにされることもなくなったのである。合計ではジワリとマイナスではあるものの、常連としてある程度の実力がついてきたと自負していた。
初めての入店
ある日のことであった。その先輩と二人で家でゴロゴロしながら、面子が集まらないとぼやいていた。突然先輩が「雀荘行かんか?」と僕に提案してきた。
正直興味はあったものの、自分はまだ実力は伴っていない初級者である。それに、「雀荘は怖いところである」というイメージは少なからずあった。
しかし先輩によると、雀荘で面倒に巻き込まれたことは一度もないとのこと。最悪先輩を頼ればいいかと思い、いざ初めての雀荘へ。緊張をなんとか抑えながら階段を上りドアを開けると、全自動卓が6~7台所せましと置いてある。ぱっと見で全貌が見渡せるが、やくざなひとはどうやら見当たらない。
先輩とメンバーさんは顔見知りであったらしく、挨拶をしたのち僕を紹介してくれた。雀荘に来たのが初めてである旨を伝えると、会員登録と雀荘でのルールを教えてもらうことに。アガリ連荘、本場1500点、白ポッチは一発ツモでオールマイティーなどなど......。
何しろすべてが初めてで、どれほど把握できていたかは定かではないが、一番新鮮だったのは祝儀制度があったことだ。この店では、赤と一発、裏ドラにそれぞれ祝儀が一枚ずつ発生し、赤は鳴いていても有効だとのことであった。ちなみに5の店にしては珍しく、祝儀一枚は2相当であった。
外での麻雀
さてルール説明を終え、先輩と同卓させてもらうことに。お願いしますと挨拶を行い、配牌を取る。いや、取ろうとした。なんと「自動配牌」だったのである。先輩宅の安価な全自動卓でしか打ったことがないため、この機能の存在を知らなかった。
次に感動したのが、「点棒が自動で読み取られる」ことである。自分で数えずとも持ち点がわかるし、相手との点差も瞬時に判別できる。
皆が配牌を開けると、ほぼその瞬間に親が第一打を切り出す。いくらなんでも早すぎる......。先輩宅で感じた速さとはさらにレベルの違う打牌選択の速さであった。僕は当然もたついていたが、誰もせかすことはない。想像と違う、優しい世界。
初アガリと冷や汗
数十分もするとなんとなく空気にも慣れ、落ち着いて打てるようになってきた。そこへ軽い良い配牌が。これはアガりたいと二副露し、下家の大学生らしき男性から初ロンを達成した。なおこのとき赤の祝儀を申告し忘れていたのにも関わらず、自主的に払い分を置いてくれた。なんとも優しい世界である。初半荘は少し沈みの三着であった。
問題は二半荘目、東三局であった。一通平和ドラドラの好手を聴牌し、意気揚々と先制リーチ。が数巡後、とんでもないことに気づく。
「これ聴牌してないじゃん!」
チョンボ時のペナルティはその時把握しておらず、頼むから流局だけはしてくれるな......と祈りながら無意味なツモ切りを繰り返す。平静を装うも、内心は大荒れ、冷や汗すらかいていた。終盤、上家のサラリーマン風の男性がタンヤオドラ一をツモ上がる。この時ばかりは本当に感謝した。二半荘目は四着であった。
続く半荘も四着となってしまい、さすがに厳しい。帰りたい旨を先輩に伝えると、所謂「ラス半コール」をかけてくれた。最後の半荘は意地の二着であった。
優しい世界
僕も実際に雀荘に行くまでは、もっと殺伐とした空間だと思っていた。しかし実際は、点数の申告間違いなど、自分に得になろうが損になろうが、決して怒ることなく間違いを教えてくれる優しい空間だったのだ。
それからというもの、雀荘にハマってしまったのは言うまでもない